D-30 / 基礎知識
排水管清掃の基礎知識
法令で決まっていること、登録業者の意味、建物の種類ごとの考え方、見積もりで確認したいことをまとめました。法令・自治体の公式情報で確認できたことだけを書き、確認できなかったことは「確認できなかった」と書いています。
法令で決まっていること(建築物衛生法)
延べ面積の大きい事務所・店舗などの「特定建築物」には、排水設備の定期的な掃除が義務づけられています。
建築物衛生法でいう特定建築物は、興行場・百貨店・集会場・図書館・博物館・美術館・遊技場、店舗・事務所、学校(研修所を含む)、旅館の用途に使う部分の延べ面積が3,000平方メートル以上の建築物です。学校教育法第1条の学校や幼保連携型認定こども園だけに使う建築物は、8,000平方メートル以上が基準になります。政令の用途の列挙に「共同住宅」は入っていないため、一般的なマンションは通常この特定建築物には当たりません。根拠: 建築物衛生法施行令 第1条(法第2条第1項の政令)。なお法第2条第1項本文には例示として「共同住宅等」の語がありますが、特定建築物の範囲を決めるのは施行令第1条の用途列挙です(e-Gov 法令検索(デジタル庁)「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令」)
施行令第1条の用途一覧(興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、学校、旅館)には共同住宅(マンション)が挙げられていません。そのため、住居専用の分譲マンションは特定建築物の対象外と読めます。ただし店舗や事務所を併設する建物など、個別の判断は管轄の保健所へ確認してください。根拠: 施行令 第1条 各号の列挙に共同住宅の記載なし(法第2条第1項は例示で『共同住宅等』と記載)(e-Gov 法令検索(デジタル庁)「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令 第1条 / 法 第2条」)
特定建築物の維持管理権原者(建物の管理について権限を持つ人)は、排水に関する設備の掃除を6月以内ごとに1回、定期に行わなければなりません。あわせて、厚生労働大臣が定める技術上の基準に従い、排水設備の補修や掃除などの維持管理に努める必要があります。根拠: 建築物衛生法施行規則 第4条の3 第1項(6月以内ごとに1回の掃除)・第2項(告示に従う維持管理)(e-Gov 法令検索(デジタル庁)「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則」)
平成15年厚生労働省告示第119号の第四は、排水設備の維持管理の基準を定めています。清掃では、排水槽内の汚水・残留物質の排除、流入管や排水ポンプ等に付着した物質の除去、排水管・通気管・阻集器の内部の異物除去(必要に応じて消毒など)、発生した汚泥等の適正処理を求めています。点検では、トラップの封水深の確認、排水管・通気管の損傷・さび・腐食・詰まり・漏れ、排水槽と阻集器の浮遊物・沈殿物や損傷・漏水の状況などを定期に点検し、必要に応じて補修するとされています。告示には阻集器の具体的な清掃頻度(何日ごと等)の数値は書かれていません。根拠: 平成15年厚生労働省告示第119号 第四(排水に関する設備の維持管理)一・二。頻度の数値は『定期に』とされるのみ。6月以内ごとの掃除は施行規則第4条の3第1項(厚生労働省「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」)
「登録業者」とは
建築物衛生法第12条の2は、次の8事業について都道府県知事の登録を受けられると定めています。1号 建築物清掃業、2号 空気環境測定業、3号 空気調和用ダクト清掃業、4号 飲料水水質検査業、5号 飲料水貯水槽清掃業、6号 排水管清掃業、7号 ねずみ昆虫等防除業、8号 建築物環境衛生総合管理業です。排水管の清掃は6号(登録建築物排水管清掃業)で、7号ではありません。登録の有効期間は6年です。
登録を受けた営業所は、排水管清掃については「登録建築物排水管清掃業」と表示できます。登録は任意の制度で、登録がなくても排水管の清掃そのものを行うことは制限されていません。一方、登録を受けていない人が、この表示やこれに類似する表示を営業所につけることは禁止されています。
当サイトに掲載しているのは、この登録(6号 建築物排水管清掃業)を受けた営業所です。登録名簿は都道府県や保健所を設置する市が公表しています(掲載の根拠)。
出典: e-Gov 法令検索(デジタル庁)「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」・e-Gov 法令検索(デジタル庁)「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(確認日 2026-10-18)
建物の種類ごとの考え方
マンション・アパート(集合住宅)
住居専用のマンションは、通常は建築物衛生法の特定建築物に当たりません(上の表のとおり)。そのため「6 か月以内ごとに 1 回」の義務はかかりませんが、キッチン・浴室・洗面所の雑排水管には油や髪の毛などが付着していくため、管理組合が計画的に高圧洗浄を行うのが一般的です。
分譲マンションの排水管清掃の頻度について、国土交通省や自治体の公的な文書で「年に何回」と定めたものは、今回の調査では確認できませんでした。頻度は管理会社・業者と建物の状態を見て決めてください。
オフィスビル・商業施設など
特定建築物に当たる建物は、排水設備の掃除を 6 か月以内ごとに 1 回行います。排水槽(地下の汚水・雑排水槽)がある建物では、排水槽の清掃もあわせて計画します。
飲食店(グリーストラップ)
厨房の排水には油脂が多く、グリース阻集器(グリーストラップ)で受け止めます。自治体の下水道部局は、阻集器の日常的な清掃を求めています。
- 東京都下水道局は飲食店向けに、グリース阻集器の日々の清掃を必ず行うよう案内しています。清掃を怠ると阻集器の能力が下がり、悪臭や害虫の原因になります。ばっ気装置などの後付け機器の設置、油脂を乳化・分散させるだけの処理剤の使用、高温排水や能力を超える多量の排水を流すことは避けるよう求めています。(東京都下水道局「飲食店のみなさまへのお願い|油の処理について 油・断・快適!下水道」)
- 広島市下水道局は、グリース阻集器の清掃の目安として、毎日 バスケットの掃除、週1回以上 浮いた油脂の除去、月1回以上 沈殿物の除去、2〜3か月に1回 トラップ内部の清掃を挙げています。取り除いた油脂などは産業廃棄物処理業者へ委託し、下水道施設に損害を与えた場合は費用を求められることがあるとしています。頻度の数値は自治体ごとに異なるため、事業所のある自治体の案内を確認してください。(広島市 下水道局 管理部 管理課「グリース阻集器の設置と適正な管理のお願い」)
- 福岡市は、グリース阻集器の残さをこまめに取り除き、油脂が溜まらないよう定期的に清掃するよう案内しています。事業活動で出た廃油・汚泥は産業廃棄物になるため、処理は産業廃棄物処理業者へ委託します。油脂で下水道管を詰まらせると、原因者が清掃費用を負担したり、第三者への被害の損害賠償を求められたりすることがあります。(福岡市 道路下水道局 管理部 下水道管理課「油脂類を公共下水道に流さないでください」)
阻集器の清掃頻度の数値は、国の告示には書かれておらず、自治体ごとに案内が異なります。お店のある自治体の案内をご確認ください。
戸建て住宅
戸建て住宅の排水管清掃に、法令上の定期清掃の義務はありません。登録業者の多くはビル・マンション向けの業務が中心のため、戸建てに対応しているかは業者の公式サイトか電話で確認してください。
依頼の流れ
建物の情報をそろえる
建物の用途・延べ面積・戸数や系統数、排水槽の有無、前回の清掃時期と記録を手元に用意します。
業者を選んで見積もりを依頼する
営業所の所在地に近い登録業者から、対象の建物に対応しているかを確認し、複数社に見積もりを依頼します。
現地調査・見積もりの比較
作業範囲(共用部の立て管だけか、専有部の枝管も含むか)、作業日数、居住者・テナントへの告知の分担を比べます。
作業と報告書の受け取り
作業後は作業報告書(写真・作業範囲・異常の有無)を受け取り、次回の計画と一緒に保管します。
見積もりで確認したいこと
- 作業範囲: 共用部の立て管・横主管、専有部(各住戸・各テナント)の枝管、排水槽、グリーストラップのどこまでが含まれるか
- 単価の単位: 1 戸あたり・1 系統あたり・1 日あたりなど、業者によって異なります
- 在宅が必要な作業か、不在住戸の扱い、作業時間帯(夜間・休日の割増)
- 作業報告書の内容(写真・管内カメラの映像の有無)
- 建築物排水管清掃業の登録の有無(登録名簿で確認できます)
受水槽・高置水槽(飲料水の貯水槽)の清掃業者は別サイトで扱います。「貯水槽清掃業者さがし」をご覧ください。